3/22/2015

アィディタロッド長距離犬ぞりレース

冬のアラスカと言えば、オーロラですが、もうひとつの楽しみは犬ぞり!地元の人たちの間でも、犬ぞりレースは話題によくのぼり、有名選手はアラスカではセレブリティ並みの扱いを受けています。

そのなかでも、アラスカで最も有名なレースは、アィディタロッド長距離犬ぞりレース。アラスカの南部にあるアンカレジから北西部のノームまで、1600キロ以上を10数頭の犬たちが引く犬ぞりで走ります。

例年、3月の初旬にアンカレジでセレモニアル・スタートという、タイムには関係のないパレードのようなものを行ったあと、翌日少し離れたウィローという町から正式なスタートをします。今年はアラスカ南部で雪が足りず、選手が怪我をする恐れがあったため、例年通りアンカレジでセレモニアル・スタートを行った翌々日に、アラスカの内陸にあるフェアバンクスからの正式スタートになりました。

セレモニアル・スタートに集まった観客

私が通っている内陸アラスカの村は例年であれば、選手たちが通るポイントであるため、村人たちはボランティアとして選手たちを迎えます。今年のセレモニアル・スタートでは、その村出身の古老フィリップ・イーサイさん(故人)が名誉選手として顕彰されました。

ビーバーを解体するフィリップさん(2013年7月)

フィリップさんは1973年に大会が現在の長さになって以来の熱心なボランティアであり、マイナス30度の日にも欠かさず、トレイル整備作業に参加したそうです。また、彼の家族は、選手や訪問客のために、村から20キロ弱離れたキャンプで待機して、コーヒーや紅茶の飲み物の他、ヘラジカやビーバーのスープ、ときにはカナダオオヤマネコまで料理して振る舞っていました。私もフィリップさんの家族と一緒にカナダオオヤマネコを食べたことがありますが、味は鶏肉に近いような気がします。

カナダオオヤマネコの素揚げ
フィリップさんは2014年に亡くなってしまったため、今年の大会では彼の妻ドーラさんがゼッケン1番をつけて、先に行われたアィディタロッド・ジュニア選手権の優勝者が乗るそりに乗ってセレモニアル・スタートに登場しました。


出発前にドーラさんの家族と記念撮影


そろそろ犬ぞりシーズンも終盤ですが、実は今、私はフィリップさんを記念した、犬ぞりに関するラジオ特集の編集に関わっています。近々、フェアバンクスの小さなFMラジオ局からオンエア予定なのでまた時間を見つけて、記事を書こうと思います。

非常に気さくで、物知りで頼りがいのあるフィリップさんは私の大好きな先生でした。 彼の冥福をお祈りして、この記事を閉じようと思います。

3/21/2015

タナナ・チーフズ会議

久しぶりに投稿してみる・・・。

今週、タナナ・チーフズ会議(Tanana Chief's Conference)に参加した。もともと、内陸アラスカのアサバスカン・インディアンの代表者たちが集まって、ゴールドラッシュに湧く当時の白人社会の代表者に対して、彼らの伝統的な生活を守るための手段を講じるように要請したのが始まりである。1915年にその会合があり、今年は100回目の会議となった。https://www.tananachiefs.org/2015-tcc-annual-convention/

最近では、会議の様子がネット配信されていたり、会議専用のスマホのアプリがあったり、日本の田舎よりもはるかにデジタル化が進んでいるような印象を受ける。

今年の会議の個人的ハイライトは、キングサーモンの急激な減少に対する対策である。キングサーモンは、アサバスカン社会における重要な食料源である(ただし、高地で生活していた集団に関しては、他の魚類のほうが重要であり、低地に移動してからこの種を重要視するようになったという人類学者の議論がある)。 鮭の類いは、年によって遡上する量が異なるが、2010年あたりから遡上量がこれまでにないくらい減少してしまった。

原因としては、商業漁業における混獲(バイキャッチ)・大量捕獲、環境汚染などが挙げられているが、おそらく、複数の要因が重なりあっており、何かひとつの究極的な原因があるわけではなさそうである。そのなかで、商業漁業における混獲は規制を設けることで影響を最小限にすることができると考えられていることから、先住民の側は混獲に対する規制を設けることを州政府に対して働きかけている。しかし、思ったほどの成果があがっていないこともあり、人によっては商業漁業の会社が州政府に賄賂を渡しているのではないかと噂するものもいる(あくまで噂・・・)。

会議のなかの発言で、データ不足のせいでちゃんとした意志決定ができないから、自分たちで研究者を雇ったり、みずから調査を行うことで、州政府からのデータへの依存を断ち切るべきだという意見があった。人類学者の議論でたまに「近代科学の(唯物論的?)世界観」と「先住民の(神話的)世界観」が互いに相容れないものであるという主張を見かけるが、少なくとも、今のタナナ・チーフズ会議にはあまりあてはまらないものかもしれないと思った。

何にせよ、鮭の減少は日本にも関係があることでもあり、というか、アサバスカンの人たちは日本や中国の市場にむけた鮭の商業漁業が彼らの生存漁業に脅威を与えていると考えていることもあり、この問題については継続して書いていきたい。