ある研究者によれば、このパルレイヤックは中国の竜、インドのナーガがアラスカまで伝播したものと考えることができるかもしれないのだという(Fitzhugh and Kaplan 1982:182-183)。下の画像は、ある考古学者のブログから拾ってきた。前段落にユピック・エスキモーが乗るカヤックの船体にパルレイヤックが描かれていると書いたが、中国、ラオスなどのドラゴンボートと実は同じルーツだったなどと想像すると楽しい(が、どれほど民族誌学的に正しい推測なのかはわからない)。この図版を見ると、確かに中国の竜に似ている気がしないでもないが、他の遺物に描かれているパルレイヤックとおぼしきものを見ると、ただのワニに見えなくもない。出典は忘れたが、人間が蛇に対して抱く脅威は先天的なものであるという実験結果があるとどこかで読んだ。様々な社会で記録されている竜、蛇、ワニなどの爬虫類系の怪物は、歴史的な接触の結果でもあるだろうが、意外と類人猿との共通祖先ぐらいから保ち続けている恐怖心の産物かもしれないと根拠なく思ったりもする。ただ、このパルレイヤックは、おどろおどろしいというよりもどこかおしゃれな感じがする。正直、ファイナルファンタジーの中ボスになって出てきてもおかしくないような雰囲気。
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パルレイヤックPalraiyuk |
もう少しユピックの怪物について書きたいことがあったのだが、書いていたら話がどんどん脱線していき、収拾がつかなくなりそうなので明日くらいにまた書こう。ユピックなどのエスキモー・イヌイット社会の怪物と日本・中国などの妖怪・怪物を比べるとおもしろいのではないか。今、日本では妖怪ブーム(?)らしいので、意外と昔の探検家の記録、現在の民族誌家のデータ、博物館の展示品、遺跡で見つかる遺物、先住民工芸家の作品などから図版を集めて本とか作ると新鮮かもしれない・・・。やりたいことリストのなかに入れておこう・・・。というか、水木しげるだったら、アラスカの「妖怪」たちをどのように図像化するであろうか。
参考文献
William W. Fitzhugh and Susan A. Kaplan (1982) Inua: Spirit World of the Bering Sea Eskimo. Smithonian Institutional Press.
Edward W. Nelson (1983[1900]) The Eskimo About Bering Strait. Smithonian Institutional Press.
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